岩手県を代表する伝統工芸品のひとつに南部鉄器があります。古くから砂鉄や漆、木炭などの原料が豊富な地で、南部藩の保護を受けながら発展してきました。約400年もの歴史を受け継ぎながら、若手の職人育成に力を入れるのが、南部鉄瓶ブランド「kanakeno」(盛岡市)です。

 盛岡駅の南側。岩手県立美術館などの文化施設が集まる盛岡市中央公園の一角に、ショップを併設した工房「SUNABA」がある。ここで、20代の3人の職人が日々腕を磨いている。

写真・図版
作業する若手職人の宮田康矢さん(手前)。桂天吾さんが笑顔で見守った=2024年10月2日、盛岡市、武田憲久撮影

 そのうちの一人、宮田康矢さん(27)が南部鉄器づくりを志すきっかけとなったのは、田山鐵瓶工房の伝統工芸士、田山和康さん(74)の仕事ぶりを見学したことだった。

写真・図版
桂天吾がゆく

 宮田さんは東京の大学を卒業…

共有