
連載「HANABI」第8部 未来へ紡いでいく(1)
「女性だから大変だ、と言ってくるのは決まってオジサン」。久米川華穏(かのん)(18)は続ける。
「やってもいないのに、できないなんて、だれにも分からないと思います」。東京・銀座。バイト先近くのカフェできっぱりと話した。
津田塾大に通う学生だ。花火師になり、家業を継ぐと決めている。
実家は、秋田県大仙市の花火会社「和火屋」。江戸時代、大名に仕えた「お抱え花火師」を起源とする老舗だ。
曽祖父の光直(故人)は、1946年に再開した戦後初の「大曲の花火」で優勝した名手だった。
業界団体「日本煙火協会」によると、打ち上げ花火を作る国内125業者のうち、女性代表は北海道、群馬、三重、和歌山の4人にすぎない。華穏が就けば、大曲では初となる。
小学生のころ、華穏は花火師になりたいと思わなかった。
夏になると、4代目の父和行(50)と母湖穂(みずほ)(46)は現場に繰り出し、寝静まった深夜に帰宅した。四つ下の妹と「いつも留守番で寂しかった」と振り返る。
そのせいか、本をよく読んだ。和行が休みの日には、ニュースを見ては事件や災害、国際問題の感想を話した。社会への関心が強い子どもだった。
そんな華穏が突然、「花火師になる」と口にしたのは中学3年のときだ。外食した時、和行に尋ねた。
「私が継がなかったら、会社はどうなるの」
■ロールモデルとの出会い…