連載「楽都の100年 音楽のまち郡山」(2)
1974年に福島県郡山市で開かれた音楽イベントが、開催50周年を迎えた今年、CDセットの発売や記念ライブ開催などでふたたび脚光を浴びた。
「ワンステップ・フェスティバル」だ。
市中心部にある開成山陸上競技場を会場に、8月の5日間で7万人以上の観客を動員し、現在は「日本の野外ロックフェスの原点」と高く評価されるイベントだ。
41組の歌手やバンドが出演し、その中には沢田研二、山下達郎、大貫妙子、上田正樹、加藤和彦、高橋幸宏、内田裕也、矢沢永吉、オノ・ヨーコと、そうそうたる顔ぶれがいた。
フェスの実行委員長を務めたのは、市内でブティックを経営していた当時36歳の佐藤三郎。4年前のハワイ旅行で見た野外ロックフェスの記録映画「ウッドストック」に感動したのがきっかけだった。
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「郡山でもあんなコンサートを開きたい」。佐藤は、ミニコミ誌づくりに関わっていた若者や郡山市内の音楽団体に呼びかけ、実行委員会を立ち上げた。
プロモーターやアーティストとじかに交渉を重ねた。「街に緑を! 若者に広場を! そして大きな夢を!」というスローガンに込めた思いを説明すると、趣旨に賛同し、ノーギャラでOKしてくれるアーティストもいた。
佐藤は、長髪をバッサリと切って丸刈りにして市長に談判したり、市内の芸能公演を仕切る大物興行主と渡り合ったりもした。
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