白石賢司(しらいし・けんじ) 1979年生まれ。2004年に環境省に入省し、地球温暖化対策課市場メカニズム室長補佐などを務めた。米カリフォルニア大を経て21年から現職。専門はエネルギー環境政策。

インタビュー連載「電ゲン論」

 「脱炭素社会」の実現が叫ばれるいま、あらためて「電気」をどうつくるべきなのかが問われています。原発の賛否をはじめ、議論は百出しています。各界の著名人にインタビューし、さまざまな立場から語ってもらいました。

 現在日本で作られる電気の7割は、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料を燃やす火力発電由来です。しかし、こうした電源からは二酸化炭素などの温室効果ガスが排出されます。また、海外から燃料を輸入するのに年間30兆円超もかかっています。脱炭素の実現のためには脱化石燃料が求められていますが、日本では電力の需要と供給の調整に使いやすいことなどから、今も火力発電に多くを依存しています。

「本当にできるのか」分からず議論進まず

 脱炭素の実現には化石燃料の使用を減らすことが不可欠だとされています。日本は2035年に化石燃料への依存を10%程度まで下げられるとする研究結果をまとめた米ローレンス・バークリー国立研究所の白石賢司さんに、実現性などを聞きました。

 ――日本では今春からエネルギー基本計画の議論が始まっています。議論を聞いていて気になる点はありますか。

日本の電源構成の現状と将来の目標

 粗さを感じます。役所の資料では、10年前の情報を使っているかのように思う時があるからです。

 エネルギー分野の技術は日進月歩、IT業界のようなスピード感で動いています。特に再生可能エネルギーは2年もあればコストが10%も下がるような業界です。コスト計算などでは最新のデータを使って、透明性のある議論をしてほしいです。

 ――昨年発表した報告書では、再エネ70%、原子力20%、残りの10%を化石燃料の中で最も温室効果ガスの排出量が少ない液化天然ガス(LNG)でまかない、再エネの不安定さの調整弁にするシナリオを提示しています。本当に実現できるのでしょうか。

 これまで再エネを増やすというと、「本当にできるのか」ということがすぐに分からず、次の議論に進むことが難しかったです。

 理由は再エネの三つの特徴です。太陽光などでは夜と昼で発電量が異なる「変動性」▽当日になるまで発電量がわからない「不確実性」▽太陽光や風力などが適した場所にしか設置できない「地域性」です。これらから、直感的に再エネを増やせないと思われていました。

米ローレンス・バークリー研究所の白石賢司研究員=2024年7月25日、東京都港区、荒ちひろ撮影

「強いチーム」で安く安定的に

 ――どのような推計で、再エネの課題を克服できると示したのでしょうか。

 報告書では、1時間ごとの太…

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