仙霊茶を収穫する野村俊介さん(右)ら=2024年5月4日、兵庫県神河町、森直由撮影
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 江戸時代の1725年、京都の寺から「仙霊(せんれい)」の名を授けられたと伝わる仙霊茶の収穫が、兵庫県神河町の茶畑(約7ヘクタール)で今月から始まった。生産農家の人たちが3人1組で摘み取り機を抱え、山の斜面にある茶畑の中をゆっくりと進んで茶葉を刈り取っている。

 幕末まで寺に毎年献上を続けてきたという伝統のある茶だったが、農家の高齢化などで2015年に生産組合が解散。神戸市出身の野村俊介さん(46)が18年に茶畑を借りて、1人だけで株式会社「仙霊」を立ち上げた。

 「やぶきた」という品種で無農薬、無肥料の自然栽培で、雑味がないのが特徴。ネット販売のほか、東京や大阪の飲食店へ販路を広げ、昨年度の売り上げは18年度の3倍以上の約1千万円まで増えた。だが赤字経営が続いているという。

 今年は透明感があるすっきりとした味の茶葉に仕上がり、5月末までに約3トンの収穫を見込む。野村さんは「今年度は台湾へ輸出を始めて、県内外へ販売店を広げたい。売り上げは2倍の2千万円を目標にして、初の黒字化を目指す」と話す。(森直由)

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