来年で運用30年を迎える長良川河口堰(かこうぜき)(三重県桑名市)。ダメージを受けた環境の回復のため、ずっとささやかれているのが、ゲート開放だ。3月に出版された「長良川のアユと河口堰」(農山漁村文化協会)でも提言されている。

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長良川河口堰。左が下流=三重県桑名市、伊藤智章撮影

 河口堰は10門の電動ゲートを上げ下げし、流量を調整。洪水時は全門開放する。膨大なコンクリート構造物を破壊しなければいけないダム撤去と違い、ボタン操作で変化は起こせる。

 塩水が遡上(そじょう)すれば、淡水と混じり合い生物相豊かな汽水域がある程度、復活する。干満差が生じてヨシ原も再生し、魚や鳥のすみかにもなる、アユをはじめとした川と海の回遊魚の遡上や降下もしやすくなるはず、という。

 一方でゲートを上げて塩水を入れることへの懸念もある。河口堰の上流で愛知、三重両県が合計毎秒3.6トンの都市用水を取水している。古くからの農業用水の取水口もある。これらの取水が安全にできるか。また地下水に浸透し、周辺に塩害が広がる恐れもある。

国交省は議論に消極的

 河口堰の建設目的の利水、治水のうち、治水は塩止め機能。それを半ば失わせるゲート開放の議論には、国土交通省は消極的だ。水質改善のため、ためた水を一気に流すフラッシュ操作をしているが、これも上流に塩水は一切入れない。

 ただこの議論は2011年か…

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