内田真弓さん(58)は26歳で、航空会社のキャビンアテンダントを辞めた。

 「自分の名で勝負したい」と海外に飛び出し、豪州で日本語教師をしていた30年前。

 雨宿りで駆け込んだメルボルンの画廊が、その後を決定づけた。

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アボリジナルアート・コーディネーターの内田真弓さん=6月29日、広島市西区、鈴木智之撮影

 扉を開けて、目に飛び込んできたのは大きな絵。

 先住民族アボリジナルピープルが描いたという鮮やかな模様に魅了された。

 絵を買えるようなお金は持ち合わせていなかったが、オーナーは、熱心に解説してくれた。

 絵が、頭から離れなくなった。

 いったん帰国し、就労ビザを取った後、吸い寄せられるように画廊に戻った。

画廊のオーナーが所蔵する、アボリジナルアートの巨匠と呼ばれたエミリー・ウングワレーさんの作品が10月19日から29日まで、東京都品川区のTERRADA ART COMPLEX IIで展示されます。

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メルボルンの画廊で勤務していたころの内田真弓さん=内田さん提供

 販売員となったが、美術の知識は乏しく、説明もつたない。

 だから売れない。

 せめて、自らの言葉で語れるようにと、先住民族に会いに行くことにした。

 いくつもの居住区に連絡を取り、唯一許可をくれた砂漠地帯のアボリジナルピープルのもとに向かった。

 何もないように見える荒野で、「これが私たちのスーパーマーケットさ」と語る彼らとともに過ごした。

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居住区でアートを描くアボリジナルピープルと、内田真弓さん=内田さん提供

 狩りにも同行させてくれた。

 おそるおそる芋虫を食べて、笑われた。

 だいぶたってから「儀式」にも誘われた。

 古い車に乗り合わせて荒野を…

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