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どのようなテーマで講師を呼ぶか、議論する生徒会役員たち=2024年12月19日午後4時55分、東京都中野区若宮1丁目、狩野浩平撮影
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 小中学校の子ども自身が20万~30万円の使い道を決める――。そんな取り組みを、東京都中野区が今年度から始めた。子どもの意見尊重をうたう自治体が増える中、予算まで子どもに託す異例の取り組みだ。子どもたちは何を考え、どう意見を交わしたのか。ある中学校の生徒会に密着した。

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 「これから生徒会主催の人権教育講演会を始めます」

 1月28日、中野区立明和中学校の体育館には約500人の全校生徒や地域住民らが集まった。

 講演したのは、東日本大震災の語り部をしている元中学校教員・佐藤敏郎さん。児童や教職員計84人が死亡・行方不明になった旧大川小学校で、6年生の次女みずほさんを亡くしている。

 佐藤さんが、みずほさんの遺体と対面した時の気持ちを話したり、教え子たちが発災数カ月後に書いた俳句を紹介したりすると、涙ぐむ生徒もいた。そんな生徒たちに佐藤さんは語りかけた。「帰ったら元気よく『ただいま』と言ってください。あの日、言えなかった、聞けなかった『ただいま』がたくさんある。日常を大事にすること、それが防災です」

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全校にアンケート 生徒自身で出演交渉も

 講演会に向け、防災というテーマを決め、人選から当日の運営までこなしたのは1~2年生計6人からなる生徒会だった。

貴重な「予算」を任された29小中学校の子どもたちは、多彩な活動に取り組みました。熟議を経て、自らの手で思いを実現した生徒会からは、達成感という言葉が聞こえました。

 中野区は今年度、子どもたち…

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