高校時代、サッカーの全国大会出場を自らのオウンゴールで逃し、一度は競技から遠ざかった。だが、また向き合い、失敗を恐れず挑戦する尊さに目覚めた男性がいる。その経験から、引きこもりや不登校の子どもたちに、感情を表現する場を提供する。
2024年11月16日、サッカーJ3のギラヴァンツ北九州のホーム最終戦。スタンドでは、マイクを握ったスーツ姿の下田功さん(62)が実況をしていた。「惜しかった。強烈なシュートでしたよ」。周りで、不登校を経験した子どもたちと保護者らが、レシーバーで聴き入る。ミドルシュートが決まると、下田さんは立って周囲を鼓舞するように右手を空に伸ばし、人さし指を立ててクルクルと回した。
下田さんはギラヴァンツ北九州の普及事業本部長。チームは地元のロータリークラブの協賛を受け、2019年から不登校の子どもたちに、サッカーボールを使った運動やスタジアム周辺のゴミ拾い、ゲーム観戦の機会を提供し、人とのつながりを体感するプログラムに取り組む。下田さんは立ち上げメンバーの1人で、これまでの参加者は延べ1千人を超えた。
いつも「サッカーは失敗ばかりのスポーツ」と解説する。だが、自身には失敗を引きずり、背中を向けた苦い思い出がある。
1980年11月。静岡県の…