元幕内力士の照強翔輝(てるつよししょうき)さんにとって、29歳は転機の年になった。

 中学を出てから14年間在籍した相撲界に3月、引退届を出した。10年にわたって闘病を強いられてきた糖尿病が主な理由だ。好調時に115キロ前後あった体重が、症状が進んで100キロほどに減っていた。「もう頃合いだな」。新しい世界へ行こうと思い立った。

 1995年1月17日、前夜から続く陣痛で、母の菊井真樹さん(51)は一睡もできないなかで地震に遭った。自宅で昼ごろまで様子をうかがった後、車に乗せられ、兵庫県立淡路病院に向かった。

 病院は、救急車がひっきりなしに出入りし、消防団員やけが人でごった返していた。

 そんな状況下で震災の15時間後、元気な赤ちゃんが産声を上げた。

 はい始めた頃から、活発で目…

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