1種だと考えられていたけど、実は10種だった――。遺伝子解析により太平洋の深海に生息するハゲナマコの種の多様性を明らかにしたと、国立科学博物館と昭和大などの研究チームが発表した。

表皮がはげ落ちたハゲナマコ=小川晟人さん提供

 ハゲナマコは太平洋の水深約200~2600メートルに生息するナマコ類。体長は約10~40センチで、全身が柔らかい表皮で覆われている。採集で使われる底引き網にかかると、引きずられて表皮がボロボロにはげ落ちてしまう。そんな特徴から、ハゲナマコという和名がつけられている。

 採集時の影響でハゲナマコの標本のほとんどが表皮がはがれているだけでなく、エタノールにつけて標本化すると体内の水が抜けて体が縮み、色素も抜ける。そのため、見た目から詳細に分類することが難しく、太平洋全域に分布するハゲナマコ属は、ムラサキハゲナマコ1種とされてきた。

傷のないハゲナマコ=小川晟人さん提供

 研究チームは、国立科学博物館など世界6カ所の博物館や研究機関が保管する178個体の標本を調査した。二つの遺伝子解析手法を組み合わせることで、太平洋のムラサキハゲナマコには遺伝的な特徴が異なる10個のグループがあることが分かった。このうち6種は、過去に学名が提唱されたことがあり、残り4種はまだ名前がつけられていなかった。今後、新種記載を進めていくという。

 生息環境の違いや生息地の隔…

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