幕別町百年記念ホールの講堂前に立つ、まくべつ町民芸術劇場の岡本祐也さん=2024年5月15日午後2時39分、北海道幕別町
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 始まりはオランダからの1通のメールだった。これまで、音楽家から直接「演奏したい」と申し込まれたことはない。だが、そのメールには音楽家本人の熱いメッセージがつづられていた……。小さなジャズコンサートが、23日、北海道十勝の幕別町百年記念ホールで開かれる。

 メールを受け取ったのは「まくべつ町民芸術劇場」の事業主任・岡本祐也さん。一読して、すぐに音楽家の「思いに応えたい」と感じたという。

 1月12日に届いたメールには、音楽家の自己紹介、活動内容とともに、百年記念ホールの音響のすばらしさやこれまでも何回もジャズ音楽家を招いていること、町民芸術劇場で10年前から開催する小中学生対象のジャズスクールのことが細かく書かれていた。いろいろな国で自分たちの演奏を届ける「音楽は旅するもの」という思いがせつせつと伝わってきた。

 岡本さんは動いた。翌日には返事を出し、年間予定を決める理事会にオンラインを通じて小橋さんを招待。まもなく、同ホール主催による公演が決まったという。

 メールを送ったのはオランダに住むジャズピアニスト・小橋敦子さん。神奈川県出身で、5歳の頃からクラシックピアノを始めた。大学時代にジャズビッグバンドに参加したのをきっかけにジャズの道に。1994年から2001年まで米国ニューヨークで研鑽(けんさん)を重ねた。2005年にオランダ・アムステルダムに移住し、ヨーロッパ各地で演奏活動を続けている。

 日本での公演はプロモーターに企画を任せていた。だが、コロナ禍でのキャンセルに円安が重なり、厳しい状況に追い込まれた。それでも、「音楽を発信したいという思いはむしろ、強くなった」と小橋さんは話す。

 そこで昨年末、日本のホール…

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