いまも多くの人に愛される「ドラゴンボール」や「Dr.スランプ」を生んだ漫画家の鳥山明さん。歴代のアシスタントはたった2人だ。初代で「ひすゎし」として知られる漫画家・田中久志さんに、鳥山さんの作品の魅力、その源泉について語ってもらった。
「次の展開はこうなるんでしょ」読者のお便りに
――田中さんは鳥山明さんのアシスタントから、漫画家の道を歩むようになったと聞きました。
「高校を卒業して1年半後、印刷会社で働いていたときです。週刊少年ジャンプの巻末に、『Dr.スランプ』の連載2週目かな、鳥山さんの『アシスタント募集。名古屋近郊の方で』というコメントが載ったんです」
「1週目を読んだときに、とてつもない人が出てきたぞ、とびっくりしたんですよ。そうしたら翌週の夕方、たまたま募集を目にして、もうこれしかないと。中学生のときから漫画家になりたかったんですが、愛知県在住の身としては、当時は漫画家のアシスタントなんて東京に行かないとなれないと思っていたので、翌朝慌てて編集部に電話しました」
「自分の連載が決まるまでの2年半、初代アシスタントを務めました。鳥山さんは本当に優しくて、お兄ちゃんみたいな人でした。その後も何年かおきに家にお邪魔していましたけど、何も変わらなかったですね」
――鳥山さんが「とてつもない人」とは、どういう部分ですか。
「絵が圧倒的でした。キャラクターが立体的で、ポンと立っているだけで存在感がある。いま新連載で出てきたとしても、きれいで目立つでしょうね。」
「それまでの多くの漫画の人気キャラの存在感は、絵柄のみの魅力というよりもストーリーと、それに沿った感情の動きや人物背景があってこそでしたが、鳥山さんのキャラは物語の内容を知らなくても人気になる。キャラデザインしたゲーム『ドラゴンクエスト』のキャラクターたちが好例だと思います」
――なぜ他の漫画家と違うのでしょうか。
「当時、鳥山さんと話してい…