紫式部が主人公の2024年のNHK大河ドラマで、改めて脚光を浴びた「源氏物語」。作家で精神科医の帚木蓬生さんは、物語に魅了され、50年にわたり読み込んできた。登場人物の心の内を描く表現に迫ると、現代の私たちが学ぶことがたくさんあるという。

写真・図版
『源氏物語のこころ』作者の帚木蓬生さん=2024年12月19日午後3時16分、大下美倫撮影

 ――昨秋、出版された「源氏物語のこころ」では、物語の中で紫式部が「心」のつく表現を多く使っていることを指摘しています

 訳していて、「心の表現」がやたら多いと気が付き、徹底的に調べてやろうと思ったんです。全部調べて、数えました。300ほどありました。

 ――心情の表現の多様さは、どのように源氏物語を豊かなものにしているのでしょうか

はかなさ・気位の高さ、短い描写で印象深く

 物語には主に25人の女性が出てきますが、一人として同じ印象は残さない。25人が本当にくっきりと、短い描写にしても読者の脳裏に残るような表現です。

 六条御息所は気位が高いので…

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