
安心できない日々が続き、夢でうなされた。
医療費の患者負担に月ごとの限度を設けた「高額療養費制度」をめぐり、限度額引き上げについてニュースで触れるたび、希少がん患者のさおさん(39)=三重県亀山市=は、不安に襲われた。
政府は7日、今年8月の限度額の引き上げを見送る方針を示したが、さおさんは「署名など声が届いたことはうれしい。ただ今後も予断は許さないと思う」と語る。
3週間に1度の投薬に「45万円」
3週間に1度、がん免疫療法の投薬を受け、大学病院で約4万5千円を支払う。これががんと闘病するさおさんの日常で命綱だ。
2021年夏、次男を妊娠中に皮膚にできる悪性腫瘍(しゅよう)「悪性黒色腫(メラノーマ)」がわかった。妊娠中に右手の中指の一部を切除し、33週で次男を帝王切開で出産した。その最中に、がんが転移して脇まで広がり、出産後すぐにそれらのがんを切除する手術をした。
しかし、全て取り除けなかったといい、がん免疫療法が始まった。
最初に使った薬はさおさんに合わず、肝炎の重篤な副作用が出て、再入院し治療を受け、投薬は中止になった。希少がんの悪性黒色腫のため、さおさんが選択できるのは残り一つの薬になった。
はじめは6週間に1度、投与していたが、再び副作用がでたため、3週間に1度、半量を投与することになった。費用は2倍かかってしまうが、医師にも「せっかく効いている大事な薬。一生終わりがないですが、長生きするために頑張りましょう」と言われた。
それ以来、この4年間、三重大学医学部付属病院で治療を受けている。
病院で受け取る領収書には、この治療などを含め「約45万円」が医療費として印字される。こうした中、治療を続けられるのは、世帯収入に応じて自己負担の上限額が定められている「高額療養費制度」のおかげであり、負担額は10分の1ほどに抑えられてきたからだった。
子どもにお金と思い出、残してあげたいが…
だが、昨年末から、政府は高…