「電通社員の自殺 労災認定」。2016年10月、顔写真とともに大きく報じられた。

 「知っている人なんだ。ラクロス部で1年先輩だった」。横浜市の女性は、大手ゼネコン清水建設に就職したばかりだった長男の言葉を鮮明に覚えている。

 亡くなったのは高橋まつりさん(当時24)。東大在学中、男子ラクロス部のトレーナーだった。

 まつりさんは月105時間に上る時間外労働をし、入社1年目の15年に社員寮で自殺した。会見した母親の幸美さん(61)は「過労死を繰り返さないで」と語っていた。女性は「勇気があるな」と思った。

 まつりさんの死は、長時間労働が染みついた社会に衝撃を与えた。幸美さんは全国各地で講演を重ね、「会社にあなたの代わりはいても、あなたの人生の代わりはいません」と訴えてきた。

 しかし、過労自殺は大きくは減らなかった。21年、女性の長男は社員寮で自ら命を絶った。29歳だった。

 「まつりさんのように仕事が…

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