栃木県高校生溶接コンクールで1位になった坂寄顕伍さん(中央)と3位の菊地奨英さん(左)、優良賞の石沢来音さん。手にしているのは溶接した鉄板=2024年12月2日、真岡北陵高、由利英明撮影

 栃木県内の高校生が溶接技術を競う「第15回県高校生溶接コンクール」で、真岡北陵高(真岡市)農業機械科の坂寄顕伍さん(1年)=宇都宮市=が優勝した。農業系高校の生徒が頂点に立つのは7大会ぶり。近年1位を占めてきた工業系高校に比べて実習時間は短いが、集中して学んだ成果を発揮した。

 コンクールは、若手技能者が集う「とちぎものづくり選手権」の溶接部門も兼ねて9月に開催され、11月に表彰があった。放電による高熱で金属を溶かしてつなぎ合わせるアーク溶接を使い、二つの鉄板を30分以内にくっつける技術を競った。同高のほか、足利工高(足利市)、栃木工高(栃木市)の計8人が参加した。

 坂寄さんは、実習の授業を担当していた教師から「見込みがある」と声をかけられ、コンクールに初参加した。実習で学んだほか、夏休み明けから放課後に週2回、外部講師に教わりながら技術を磨いた。

 坂寄さんは「初めて出た大会なので、いろんな不安があった。優勝してうれしい気持ちでいっぱい」と喜んだ。同科の大森裕樹学科長は「(1位になれたのは)メンタルの部分も大きいと思う」と話し、本番で緊張しなかった精神力をほめた。

 また、3位となった菊地奨英さん(2年)=益子町=は「昨年も出たけれど、今年は賞を取りたいなと思って臨んだ。緊張しないように頑張った」。優良賞の石沢来音(きの)さん(1年)=真岡市=は「緊張すると手が震えて溶接がうまくいかなくなる。いつも通りできるようにした」と振り返った。

 上位2人は、来年4月下旬に神奈川県で開かれる関東甲信越大会に出場する。優勝すると全国大会に出られるが、工業系の生徒に限定されるため、農業系の坂寄さんは進めない。それでも、「もっと自分の腕を上げたい」と意欲を燃やす。

 坂寄さんの両親は農家で、トラクターや精米機など農業機械を使って稲作や畑作をしている。坂寄さんは元々もの作りが好きな上、農家を継ぐつもりなので、農業と機械を学べる同科を選んだ。「(両親は)広い畑に手作業で除草剤をまいている。遠隔操作でドローンから簡単にまけたらいいなと思う」と話し、デジタル技術を活用するスマート農業に取り組む夢を持つ。

 同科がある高校は県内では真岡北陵高だけで、全国的にも限られている。大森学科長は「カリキュラムを見る限り、他県の農業機械科は自動車整備がメインの印象を受ける。農業機械を入学から卒業まで学ぶのは真岡北陵高だけだと思う」と話す。

 橋本智校長は「1位はスペシャリストとして進む第一歩。優勝という形で評価されたのはすばらしい」と述べた。

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