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元文部科学副大臣の鈴木寛さん=2024年10月30日、東京都文京区の東京大学、各務滋撮影

 高校は義務教育ではないのだから、少数の好きな科目を選択して深く学んだ方が学ぶ意欲がわく。学習指導要領も、高校についてはもう要らない。元文部科学副大臣の鈴木寛さんが、そんな思い切った問題提起をしています。背景にある問題意識を聞きました。

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 ――高校は生徒が本当に好きな3~4科目をじっくり学べばいい仕組みに変えた方が良いと専門紙「教育新聞」で提言しました。どんな問題意識からですか。

 「人工知能(AI)が普及して知識はAIが教えてくれる時代になりました。これから大切なのは答える力より問う力。問題意識です。ところがOECD(経済協力開発機構)の学力調査で、日本の15歳は成績こそトップクラスですが、一番大事な自発的に学ぶ意欲に欠け、自己肯定感も低いとの結果が出ています。加えて、大人になって最も学ばないのが日本人です。ほぼ全ての人が受ける教育の最終ステージである高校のあり方は、ドラスティックに見直す必要があります」

自己肯定感高めるには

 ――何が原因でしょう。

 「これまでは入試で脅して苦行を強いてきた。まさに『勉強』です。志願倍率が高かったから機能してきましたが、少子化で高校も大学も希望者はどこかにはほぼ入れるようになり、入試による外発的動機付けは成立しなくなりました」

 「自己肯定感を高めるには、小さな成功体験を積み重ねることです。自分たちの学びは自分たちで改善する。教師や校長にそのための意見や提案を伝え、実現する。高校は9割以上の人が行く一番身近な社会です。『世の中』を良く出来たという体験が自己有用感や肯定感に直結します。現状はそれがない。それどころか、好きでもない教科を強いられ、嫌いなことを耐え忍ぶ忍耐力の養成の場になっています。難関大の受験に8科目必要な生徒は仕方ないとして、他の生徒たちにまで同じことを義務づけるのは適切でしょうか」

 ――学ぶ科目を絞ると、どう変わりますか。

 「毎日好きな科目の授業があ…

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