どのように出会ったのか、なぜ志したのか、どのような夢を抱いて戦っているのか――。棋士たちの肉声を伝える連載「囲碁よ」。高尾紳路九段(47)の物語。

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 碁を覚えるまでの記憶って、ないんです。

写真・図版
高尾紳路九段=2024年9月4日午後5時20分、宮崎県高原町、北野新太撮影

 小学1年の時に始めて、碁会所でお菓子をくれたり、大人に褒めてもらえることがうれしかったことが僕の最初の記憶です。

 生まれ育ったのは千葉市です(1976年生まれ)。アマ二、三段くらいあった父は碁の好きな人で、でも、近所に打てる人が少なかったので自分の子供に教えてしまおう、ということで、三つ上の兄を徒歩10分くらいのところにある碁会所に通わせることになりました。1年生の僕は「ついでだから一緒にやらせようか」くらいで。

 でも、なぜか僕は早く強くな…

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