自然界でほとんど分解されず、「永遠の化学物質」とも呼ばれる有機フッ素化合物(総称PFAS(ピーファス))が、全国の水道水や河川から高い濃度で検出される例が相次いでいます。健康への影響は大丈夫なのか。対策はどうあるべきか。国立環境研究所環境リスク・健康領域次長の中山祥嗣(しょうじ)さんに聞きました。
――PFASの健康影響について評価する、内閣府食品安全委員会のワーキンググループ(WG)で座長代理をなさっています。
PFASにはたくさんの種類がありますが、WGでは特に健康影響への指摘が多くなされている「ペルフルオロオクタンスルホン酸」(PFOS(ピーフォス))と「ペルフルオロオクタン酸」(PFOA(ピーフォア))、「ペルフルオロヘキサンスルホン酸」(PFHxS)の3物質について、検討結果を先ごろまとめ、評価書を公表しました。
発がん性、国際機関は「あり」と判定
――その内容ですが、総じてさほど評価は厳しくないなと感じました。たとえば、国際がん研究機関(IARC)はPFOAについて「ヒトに対して発がん性がある」としているのに、今回の評価書では発がん性に関して「証拠は限定的」などとしています。
まず、ぜひ理解していただきたいのですが、IARCと食品安全委員会では、何を評価するかという点が異なっています。IARCは有害性の評価、つまり「その物質に有害性があるか否か」をみているのに対し、食品安全委員会は「その物質をどの程度体に取り込むことでどれだけリスクがあるか、つまり危険か」を評価しています。
IARCが「発がん性がある」としている物質にはアルコール飲料や加工肉なども含まれます。でも、それぞれをどれくらい摂取すると発がんリスクがどれほど上がるのか、IARCは評価していません。
WGは「PFASをどれだけ体内に取り込むことで、がんをはじめとした健康リスクがどれくらい上がるのか」を評価するのが目的で、数千本の科学文献を対象に内容を検討しました。
その結果、がんを含むさまざまな健康影響に関して、「これ以上の摂取は避けるべきだとする量を設定するには、ヒトに関するデータが十分ではない」と評価しました。
動物での結果、どう活用
――発がん性についてのWGの評価をもう少し教えてください。
ヒトへの発がん性に関して判…