• 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 広島県の山あいにある世羅町で、特別天然記念物のコウノトリが電柱の上に巣を作って、ひなを育てている。このつがいは昨年も同じ電柱に巣を作り、産卵した。町は感電死の恐れなどがあるとして、何度もこの巣を撤去し、人工巣塔を建てたが、寄りつかなかった。つがいはなぜ電柱を選んだのか。そして、なぜこの電柱なのか――。

 その電柱は、山に近い集落の住宅前に立つ。町によると、コウノトリのつがいは3月11日以降、電柱の上に作った巣に長時間滞在するようになった。4月16日にひながかえったとみられ、餌を与えるようなしぐさが確認されているという。

昨春誕生した1羽は感電死

 つがいに着けられていた足輪によると、2羽は2020年に兵庫県豊岡市の人工巣塔で生まれた。昨年もこの町に飛来し、同じ電柱の上に巣を作ると、5月に3羽のひなをかえした。

 コウノトリの産卵が確認されたのは県内初で、町を挙げて親子を見守った。雄の2羽は「喜羅(きら)」と「希羅里(きらり)」、雌は「羅々(らら)」と名付け、住民票ならぬ「鳥(ちょう)民票」を発行。3羽は順調に育ち、翼を広げて町から巣立っていった。

 ところが、希羅里は昨年10月、熊本市内で送電線に触れて感電死した。

 こうしたことから、町や町民らでつくる「コウノトリ保全地域協議会」は今年1月、住宅から少し離れた中学校グラウンド隣の耕作放棄地に、人工巣塔を建てた。高さ約16メートルの鉄製の塔。人工巣塔なら、コウノトリが感電する恐れはない。生まれたひなに足輪を着ける際、周囲を一時停電することもない。昨年撤去していた巣を塔の上に載せ、つがいをいざなった。

専門家「コウノトリは賢い」

 しかし、コウノトリにとっては“ひとごと”だったようだ。

 つがいは、人工巣塔から北に…

共有