太陽光に比べ、導入が遅れる風力発電。国の目標に到達するには、今の5倍近く増やす必要があるが、最近は住民らの反対で頓挫するケースも目立つ。どうしたら導入を加速できるのか。地域に足を運び、海外の事例にも詳しい法政大学の高橋洋教授(エネルギー政策論)は、ある解決策を提案する。

 ――日本の風力発電はどのくらい遅れているのですか。

 「導入量は2023年末時点で約5・6ギガワット(560万キロワット)。太陽光の十数分の1で、先進国で最も少ない水準です。国は30年までに風力を23・6ギガワット分導入する目標なので、あと6年で5倍近く増やす必要があります」

 ――間に合うのでしょうか。

 「難しいとみます。導入目標の内訳は陸上風力が17・9ギガワット、洋上風力が5・7ギガワット。洋上はこれから導入が増える段階ですが、陸上の導入量が5・5ギガワットにとどまっているのが響いています。陸上は洋上よりコストが安く、地域に根ざした企業や自治体も所有しやすい。もう少し陸上を増やす努力をすべきですが、青森県の八甲田での計画など住民や自治体の反対で中止になる計画も増えています」

 ――どうすればよいのでしょうか。

 「青森の八甲田や、宮城や山形の蔵王のような、県民にとって大事な場所では受け入れられないでしょう。そうした『聖地』以外で風況の良い適地を選び、経済的な還元を行うなど、事業者と地域が『顔の見える』関係を築いていけば、理解を得やすくなると思います」

 ――顔の見える関係とは?

 「例えば秋田県にかほ市では…

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