写真・図版
三重県

 「顧客の自宅で数時間、監禁状態にあった」「その場にあった雑誌を投げつけられた」――。顧客から暴言などを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)について、三重県が県内の労働者に調査したところ、過酷な実態が明らかになった。過去3年間で3人に1人がカスハラを受けていた。

 県は5~7月、県内の労働者に3年間の被害状況をウェブでアンケートし、3779人から回答を得た。

 明らかになった被害の内容は表の通り。

 労働者の32%が「被害あり」と答えた。業種別では、医療・福祉、運輸・郵便業、卸売・小売業の被害が多く、それぞれ45%に上った。行為者(複数選択)は顧客等が95%、取引先等が7%だった。

 発生行為(同)は、「威圧的な言動」が76%、「脅迫・中傷等」(対面・電話)が60%、「過度なクレーム」が38%と続いた。

 発生要因(複数選択)は、「不満のはけ口・嫌がらせ」が55%、「顧客等の勘違い」が43%。「接客・サービス提供のミス」が36%だった。

 県は県内に本社がある企業にもウェブで調査し、852社から回答を得た。カスハラを受けた企業の45%が従業員に「何らかの影響あり」と回答した。内訳(複数選択)は、「配置転換」(16%)をはじめ、「休業が発生」「離職が発生」「通院等が必要」(それぞれ9~5%)と深刻だ。

 カスハラ対策は69%が未実施だった。従業員1千人以上の企業は29%だったが、30人未満は75%と企業規模が小さくなるほど対策がなされていない実態も明らかになった。

 対策未実施の理由(複数選択)を尋ねると、「必要なスキル・ノウハウがない」が35%と大きかった。逆に講じられている対策(同)は「相談体制の整備」が67%で最も多かった。

 行政に求める対策(同)は、「情報発信」が43%、「マニュアル等の整備」が41%、「法令等の整備」が40%だった。

 県は7月、有識者らでつくるカスハラ防止対策検討懇話会を設置した。防止条例の来年度の成立をめざしており、罰則規定を設けるかどうかも含めて今回の調査結果を踏まえ、対策を検討する。

 東京都は今月、カスハラ防止をめざす条例を全国で初めて制定した。桑名市は今年度中のカスハラ防止条例制定をめざし、パブリックコメントを募集中だ。(高田誠)

     ◇

明らかになったカスハラ被害

 ●顧客からのクレームに対し、自宅を訪問し説明するが納得されなかったため、帰社できず数時間監禁状態にあった。

 ●「大手企業だから顧客の要望に応えるのが当たり前」といった叱咤(しった)に近い言動を1時間ほど対面で聞かされた。

 ●信号の都合でバスの到着が2分遅れたら、「おせーんだよ。ばかやろう!」などと怒鳴られ、出発が遅れると別の客から「もっと速く走れ!」などとクレームがあった。

 ●出勤日に合わせて来店し、名指しで接待を求められ、手紙を渡されたり、勤務後に店外で待ち伏せされたりした。

 ●「アルバイト従業員をすぐ辞めさせろ」「殴るぞ」などと一方的に怒鳴られ、「(対応を)録音しているからな」と脅された。

 ●電話が聞きにくかったため用件を聞き直すと、「仕事やる気あるのか」「すみませんと言えば済むと思うのか」などと仕事に支障が出るほど罵倒された。

 ●毎日電話をかけてきて、長時間にわたり同じようなクレームを繰り返し、様々な要求をして電話を切らせてくれない。

 ●対応中に、その場にあった雑誌を投げつけられた。

 ●店のミスにつけ込み、「請求額を半額にしろ」と高圧的に言われ、応じないと「ネットに掲載する」と脅された。

 ●対応に不満のあった客から、「自分はヤクザだ」などと脅された。

共有