300年以上も技が受け継がれ、今では1軒を残すのみとなった名尾手すき和紙工房の新しい直営店が22日、佐賀市大和町にオープンする。2021年の豪雨で被災し、昨年近くに工房を復活させたばかり。新店舗で「和紙の可能性を広げたい」と意欲を見せている。
名尾手すき和紙は佐賀県重要無形文化財。江戸時代、山に囲まれ耕地に恵まれなかった名尾地区に、庄屋が現在の福岡県筑後地方で紙すきの技術を習得して持ち帰ったのが起源とされる。
原料には、通常使われるコウゾではなく、コウゾの原種で名尾地区に自生するカジノキを使う。コウゾより繊維が長く丈夫な紙ができるため、ちょうちんや障子紙、神具などに重宝され、最盛期の昭和初期には100軒以上の工房があったという。
近代化に伴い製紙業は衰退し、約40年前からは1876年創業の谷口家のみとなった。和紙の一般販売のほか、日光東照宮や唐津くんちの曳山(やま)など、文化財などの修復も手がけている。近年は外国人も工房を訪れるという。
21年8月の豪雨で工房に土…