ソウルで取材に応じた作家のハン・ガンさん=2024年4月30日、チェ・スンド氏撮影

 スウェーデン・アカデミーは10日、2024年のノーベル文学賞を、韓国の作家ハン・ガンさん(53)に授与すると発表した。韓国人の文学賞は初めて。アジアの女性としても初となる。

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 スウェーデン・アカデミーは授賞の理由について、「作品のなかで、過去のトラウマや、目には見えない一連の縛りと向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにした」と説明。「彼女は肉体と精神のつながり、生ける者と死者のつながりに対して独特の意識を持っており、詩的かつ実験的な文体で、現代の散文における革新者となった」とたたえた。

 ノーベル賞の公式SNSにアップロードされた電話インタビューで、ハン・ガンさんは「私は韓国で本とともに育ちました。韓国文学や読者、作家仲間にとってこれが良いニュースであることを願っています」と語った。

 ハン・ガンさんは1970年、韓国・光州市生まれ。93年に季刊誌に詩が、94年に新聞に短編小説「赤い碇(いかり)」が掲載され、デビューした。心に傷を抱えた人々と、その魂の回復を詩的で繊細な文章でつづり、現代韓国を代表する作家となった。

 2002~05年に発表した三つの中編からなる「菜食主義者」に収録した1編で、韓国で最高峰とされる李箱(イサン)文学賞を受賞。国際的な評価も高く、同書の英語版で16年、英国の国際ブッカー賞をアジアの作家で初めて受賞した。

 14年には、軍が市民を武力弾圧した光州事件を題材にした長編「少年が来る」を発表。21年の「別れを告げない」は、済州島の4・3事件をもとにした小説を発表していた。ほか、小説に「ギリシャ語の時間」「すべての、白いものたちの」「回復する人間」、詩集に「引き出しに夕方をしまっておいた」などの邦訳がある。

 今年の賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5700万円)。授賞式はノーベルの命日にあたる12月10日、ストックホルムで開かれる。(ロンドン=藤原学思)

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