特集「8がけ社会」 韓国編⑤

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韓国に来てからの歩みを振り返るシェーク・アル・マムンさん=2024年3月9日、ソウル、稲田清英撮影

 韓国の映画監督であるシェーク・アル・マムンさん(50)は、南アジアのバングラデシュ出身。外国で働く労働者や移民の悲哀を描いた映画や演劇を次々と世に出し、国内外で高く評価されています。自身もかつては、韓国で働く不法(非正規)滞在者でした。やがて韓国人と結婚し、韓国籍を取得。韓国社会の一員として、外国人労働者の権利を守るための活動に携わってきました。マムンさんの目に映る韓国社会、そして韓国に暮らす外国人労働者の姿とは――。

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 ――なぜ韓国に来たのですか。

 バングラデシュのダッカで、教育熱心な家庭で育ちましたが、私は勉強が嫌いでした。試験の点数で評価されるということが苦手でした。バングラデシュから出たい、とずっと思っていたんです。

 24歳でまだ大学生だった1998年に、親戚がいた韓国に行くことを決めました。短期滞在のビザで入国し、間もなく、ソウル郊外の南楊州市にあった家具工場で働き始めました。親戚の知人の紹介です。

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 ――短期のビザで入国したものの、韓国で働き続ける考えだったのですか。

 ビザの有効期限の90日を過ぎても帰国せず、非正規滞在者として働き続けました。

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 「超少子化」に直面する韓国が外国人の働き手を増やそうとしています。日本とも共通する課題に取り組む現場の今を探ろうと2人の記者が取材に向かいました。不法滞在者だったマムン監督。記事後半で、韓国社会に「手をしのべてほしい」と訴えます。

 ――そういう形で働いている外国人は多かったのですか?

 南楊州には家具などの工場が…

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