自著について語る俳優の堀内正美さん=2024年11月5日午後2時7分、神戸市役所、島脇健史撮影

 阪神・淡路大震災の発災直後から約30年にわたって被災者支援を続ける俳優の堀内正美さん(74)=神戸市=が、ボランティアとしての経験や遺族らとの交流の記憶をまとめた書籍「喪失、悲嘆、希望 阪神淡路大震災 その先に」を出版する。

 5日に市役所で会見し、「災害では他者を思いやることが大事。来年の震災30年を前に、市民ベースで記録を残したかった」と語った。

 1995年1月17日早朝に発生した阪神大震災では、発災直後に自宅から車で被害の大きかった同市長田区に入り、被災者の救助活動にあたった。

 当時レギュラー番組を持っていたラジオ関西(同市)では、リクエスト電話にかかってきた被災者からの声に耳を傾けた。「がんばろうよ、神戸。僕たちが愛した街だから」と声をかけ続け、発災数日後にはボランティアを受け入れる市民団体「がんばろう‼神戸」を立ち上げた。

 これが後に、全国に広まった「がんばろうKOBE」というスローガンにつながった。

 遺族たちの支援も続けてきた。

 「遺族が生きている証し」として、神戸市中央区の東遊園地にガス灯をともすことを市側に提案した。2000年に「訪れた遺族や被災者が少しでも前を向けるように」という思いを込めて、「希望の灯(あか)り」と名付けられた。

 書籍にはこうした震災の経験が克明につづられている。堀内さんは「喪失と悲嘆に暮れる遺族らが前を向けるように、出会いの場をつくってきた。震災に限らず、心に傷を負った様々な方たちに読んでもらい、少しでも顔を上げるきっかけになってくれたら」と語った。

 書籍は8日発売。312ページ、四六判で1980円(税込み)。問い合わせは月待舎(つきまちしゃ)(078・600・0521)へ。(島脇健史)

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