均質で真新しい住宅が立ち並ぶ。土地の特徴は読み取れないが、別の写真の看板には「閖上(ゆりあげ)」や「富岡町」の文字も。仙台市在住の写真家かんのさゆりさんは、東日本大震災後に東北に現れた新興住宅地を題材としている。東北で表現をするうえでは避けがたい「震災」とどう向き合っていくのか。単純には割り切れない葛藤を抱え続けている。

写真・図版
〈New Standard Landscape〉より 2022年 宮城県仙台市泉区

 かんのさんが新興住宅を撮るようになったのは2016年ごろから。太平洋沿岸から距離のある仙台市泉区の自宅の近所では、住宅地の開発ラッシュで次々と新築の家が建ち始めていた。

 その後、津波被害で高台移転した地域にも、同じような家が立ち並んでいることに気がついた。

 新しく造られた土地に生まれている真新しい光景。それまでの土地の記憶からは切り離されて見えるが、いつかは誰かの故郷になっていく。

 「最初は複数撮った写真の一部だったのですが、見返すうちにだんだん気になってきた。それから今まで、続けて撮っています」

写真・図版
〈New Standard Landscape〉より 2017年 宮城県仙台市泉区

 一連の作品は「New Standard Landscape」というシリーズにまとめた。直訳すると「新しい標準的な風景」だ。津波の被害を受けた地域もあれば、そうでない場所も。どちらなのかは、ほとんどの写真で読み取れない。

 「見た目で場所がわからないことが重要だと思っていて。各地で同質の光景が生まれていることに関心があります」

「まるで踏み絵のよう」

 積極的に「震災後」を撮って…

共有