写真・図版
南原大輝さん(左)と酒井聖弥さん。コンビ「高気圧ガール」を組んでM-1初戦に出た
  • 写真・図版

 少し前まで電柱に上っていた。もちろん仕事で。

 夏は暑く、冬も暑い。「冬もビールがうまかった」

 でも、今年はもっとアツかった。

 M-1にもう一度挑戦したから。去年の1回戦の大失敗を乗り越えて――。

小学校時代の仲間と

 南原大輝さん(24)は、かつて電気工事会社に勤めていた。電柱に上っては汗をかき、電柱から下りても冷や汗をかいた。「お客さんのところに営業に行ったりときつくて。トーク力は上がりました」

 会社をやめたのは、夢をかなえるため。「小学生のころから芸人になりたくて」

 踏み出す1歩として、M―1に出た。小学校時代の仲間を相方にした。

 出場申し込みの職業欄には「フリーター」と書いた。今はバーでアルバイトをしている。生活は一変したが、へっちゃら。「前の職場がめちゃめちゃきつかった分、鍛えられたんです」

 相方の酒井聖弥さん(23)も「フリーターど真ん中です」。ローソンの店員として働いている。外国人が多い職場で、言葉が通じにくい。「ジェスチャーだけ、めっちゃうまなって」。前向きであっけらかん。

叫ぶしかなかった1年前

 2人とも大阪・鶴橋で育った。日本最大のコリアンタウンがあり、キムチのにおいに焼き肉の煙がもくもく。最近はK-POP人気の影響で若い女性客が多い。下町から観光地へ。ポップに様変わりし、「なんか街のにおいも変わって」(酒井さん)。

 「でも、僕は今も大阪っぽさが好き。漫才でも関西弁をまくしたてたい」(南原さん)。「理想はM―1第5代王者のブラックマヨネーズのようなしゃべくり」という。パーンと弾ける熱い話芸に、一歩でも近づきたい。

 1回戦の8月、会場に乗り込んだ。

アマチュア出場者としてお笑いのステージに立った2人。どうなるかわからない舞台でも、出たら最後、どうにかするしかない。頭が真っ白になった瞬間についても語ってくれました。

 ライバルは大会史上最多1万…

共有