国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のフィリッポ・グランディ高等弁務官が28日、東京都内で開かれたシンポジウムで世界の難民の現状について語った。持続的な難民支援には民間の協力が不可欠だとして、日本企業などに期待した。
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グランディ氏は、紛争や迫害などによって家や故郷を追われた人たちの数は現在約1億2300万人に上り、「偶然にも日本の人口とほぼ同じだ」と指摘した。UNHCRによると、この数は今年5月時点で過去最多の推計1億2千万人に達し、減る兆候はみられない。
世界各地で紛争が絶えず、難民問題が長期化するなか、グランディ氏はまた、開発支援組織と人道支援組織が協力して支援を持続可能なものにしていく必要性を訴えた。なかでも、民間部門が寄付だけでなく雇用や技術・知見を提供する「パートナー」として行動する重要性を強調。「多くの日本企業がこの試みにますます参加している」とし、「政府だけでなく、皆さんからの支援を期待している」と呼びかけた。
グランディ氏はまた、イスラエルと隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの停戦合意に触れ、「待ち望んでいた良いニュースだ」と歓迎。「レバノンの人々のために、停戦が継続されることを強く願う。この停戦は持続可能だ」と話した。
グランディ氏は27日から日本を訪れ、政府関係者や企業幹部などとも面会したという。29日に開いた記者会見では、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長やソニーの吉田憲一郎会長兼CEO(最高経営責任者)などとも面会したことを明かし、「ビジネスリーダーたちが人道活動にパートナーとして関わりたいという関心の高まりを感じ、勇気づけられた」と語った。