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利尻高校の吹奏楽部員たち。部員は3人。練習の合間にはおしゃべりと笑顔が絶えない=2024年6月、北海道利尻町
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 「今年の夏のコンクール、出られるかな……?」

 雪どけが進むころ、北海道利尻高校の吹奏楽部員・渡辺歩羽さん(3年、フルート)は、そんな不安に駆られていた。

 日本最北エリアに浮かぶ美しい離島・利尻島で唯一の高校。全校生徒は60人ほどで、吹奏楽部は上級生の引退後、当時1~2年の女子3人で活動していた。ここ3年で部員は10人、9人、6人…と減った。でも、悲壮感はなかった。

少子化の影響で、維持が難しくなってきている部活動があります。少人数でも充実した活動を目指す吹奏楽部の姿を取材しました。

 3人の楽器はフルート、クラリネット、アルトサックス。木管三重奏として、冬には3~8人で競う「アンサンブルコンテスト」に挑戦した。

 アンコンには指揮者がいない。本番に向けて3人で意見を出し合いながら曲を作り上げていくうち、どこかぎこちなかった関係性も自然と打ち解けていった。達成感に包まれた本番後、悪天候でフェリーが欠航して島に帰れなくなったハプニングも良い思い出だ。吹雪の中、セイコーマートにいった。めちゃくちゃ楽しかった。

 吹奏楽部員にとって、次なる大きな目標は夏のコンクールだ。でも、春が近づいても島内の三つの中学から、「吹奏楽部志望の新入生がいる」との声は聞こえてこない。渡辺さんの母校では部員減で吹奏楽部がなくなっていた。だから、「きっと誰も入部しない」。そうあきらめていた。

 コンクールの規定では、最少のC編成は「25人以内」。3人でも出場は可能だが、15人でも「極小編成」と言われるほどの世界だ。迫力の面ではどうしても劣ってしまうだろう。そして、この人数だからこそ、一人ひとりが背負うものも大きい。

 「私はコンクールに出たい。でも、ふたりはどうしたいかな……」

 渡辺さんはある日、意を決し…

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