9月21日の豪雨による河川の増水で流された自宅の前に立つ谷内均さん。1階部分は流されて残っていない。1階に使われていたと思われる木材は、数キロ先の下流に引っかかっていたという=2024年10月26日午後2時37分、石川県輪島市打越町、金居達朗撮影

 元日の能登半島地震から11月1日で10カ月。再び冬が近づく奥能登の谷間の集落で、1人の区長が「振り出しに戻された」とこぼす。避難所を出て、穏やかな日々を取り戻そうとしていた矢先。9月の大雨で自宅が流され、ふるさとの未来が見えなくなった。

 石川県輪島市中心部から南に6キロ。谷内(やち)均さん(66)が区長を務める同市打越町は、山林の谷筋に家々があった。

石川県輪島市打越町

 2歳~80代の12世帯約20人で新年を迎えた集落を地震と豪雨が襲い、今ここで暮らす人はいない。孫3人を含めた7人家族の谷内さんも家を失い、再び避難所に身を寄せ、片付けに通う。

 大工の谷内さんが建てた自宅は地震には耐えたが、大雨の濁流で1階部分がなくなった。周囲に散乱する杉の流木には、見慣れた衣類や趣味の釣り具、ソファや布団が引っかかっている。

9月21日の豪雨による河川の増水で流された自宅から出てきた谷内均さんの孫のランドセル。4月に入学したばかりだが、泥にまみれ壊れてしまった=2024年10月26日午後2時17分、石川県輪島市打越町、金居達朗撮影

 2階部分は10メートルほど押し流されて形だけとどめる。妻の智恵さん(64)が泥だらけのランドセルを手に「孫がまだ半年しか使ってないのに」と悲しげに言う。

 谷内さんは泥だらけの仕事場…

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