元日の能登半島地震から11月1日で10カ月。再び冬が近づく奥能登の谷間の集落で、1人の区長が「振り出しに戻された」とこぼす。避難所を出て、穏やかな日々を取り戻そうとしていた矢先。9月の大雨で自宅が流され、ふるさとの未来が見えなくなった。
石川県輪島市中心部から南に6キロ。谷内(やち)均さん(66)が区長を務める同市打越町は、山林の谷筋に家々があった。
2歳~80代の12世帯約20人で新年を迎えた集落を地震と豪雨が襲い、今ここで暮らす人はいない。孫3人を含めた7人家族の谷内さんも家を失い、再び避難所に身を寄せ、片付けに通う。
大工の谷内さんが建てた自宅は地震には耐えたが、大雨の濁流で1階部分がなくなった。周囲に散乱する杉の流木には、見慣れた衣類や趣味の釣り具、ソファや布団が引っかかっている。
2階部分は10メートルほど押し流されて形だけとどめる。妻の智恵さん(64)が泥だらけのランドセルを手に「孫がまだ半年しか使ってないのに」と悲しげに言う。
谷内さんは泥だらけの仕事場…