【動画】中間貯蔵施設の敷地内を報道公開=川原千夏子記者撮影

 東京電力福島第一原発事故に伴う除染で出た土(除染土)の行き先探しが本格化しそうだ。この3月で、中間貯蔵施設への運び込み開始から10年を迎える。政府が地元に約束した、福島県外での最終処分期限の2045年までは残り20年になる。

 2月中旬、大熊町の中間貯蔵施設が報道陣に公開された。土地の表土のはぎ取りや住宅の洗浄などの除染で出た土や廃棄物が収められている施設だ。

 縦700メートル、横200メートルの土地に、15メートルの高さまで土が積み上げられていた。全体を見通せない大きさだが、これでも施設で保管されている除染土のうち約15%にすぎないという。

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除染土を積み上げた保管現場=2025年2月18日、福島県大熊町、杉浦奈実撮影

 上に立つと、土の飛散防止のため芝が張られており、サッカーコートのようにも見えた。渡された線量計の数値は毎時0.17マイクロシーベルト。除染土を線量の低い土で覆っているためさほど高くないといい、除染が済んでいない道向こうの山林に近づくと高くなっていった。

 「施設」といっても大きな建物があるわけではない。広大な土地のあちこちにこうした保管場や、除染などで出た廃棄物を燃やした後の高線量の灰を収めた建物が散在する。

 施設内には、今も地域の人が世話をする神社が残る。ただ、この日は人とすれ違うことはなかった。震災から10年あまりを経て新設された役場や学校などのある施設外とのコントラストが印象に残った。

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除染土を積み上げた保管現場の上に立ち、説明する環境省職員(右)ら=2025年2月18日、福島県大熊町、杉浦奈実撮影

 11年3月に発生した原発事故で、大量の放射性物質が広がった。放射線量を下げるため、各地で除染が行われた。事故を起こした原発が立地する福島県では膨大な除染土が出た。

 県内から発生した除染土や廃棄物は事故後しばらくは仮置き場や庭先などに保管。ただ、こうした除染土などが街中に残ったままでは復興の支障になるとして、政府が確保を急いだのが中間貯蔵施設だ。

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中間貯蔵施設の地図

 原発のある双葉町、大熊町など、地元が「苦渋の決断」で受け入れた後、施設が両町にまたがって設置された。15年から除染土などを搬入。24年末時点では東京都渋谷区とほぼ同じ広さの約1600ヘクタールに約1400万立方メートルが積まれている。東京ドーム約11杯分に相当する。

 除染土などは、搬入開始から30年で県外に運び出し、「最終処分」されることになっている。14年に福島県の佐藤雄平知事(当時)が施設の建設受け入れを国に伝えた際、県外処分の法制化を求め、法律に明記された。

政府の方針、実現可能性は?

 とはいえ、大きなハードルが…

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