「変な家」の勢いが止まらない。中古住宅の奇妙な間取り図に端を発し、やがて恐るべき真実が明らかになる異色の不動産ミステリー。著者・雨穴(うけつ)さんの小説は2021年の単行本刊行以来、文庫版と合わせて170万部を突破。今春公開の映画版は興行収入40億円を超えた。何が人を引き付けるのか、3人の識者が謎に迫る。

映画「変な家」から(C)2024「変な家」製作委員会

「人間心理突く直球」 朝宮運河さん(怪奇幻想ライター)

 ミステリーで殺人現場の状況説明をするための添え物的扱いだった間取り図を、主役にした発想に新しさがあります。図版をあれこれと見せながら、間取りに隠された謎にテンポよく解釈を重ねていく話運びも新鮮です。もともとウェブ記事とネット動画でバズった話を、うまく小説の形に落とし込んでいる。ただ、このヒットは突然生まれたわけではありません。

記事後半では、映画評論家の柳下毅一郎さんが映画の出来について、マドリストとして活動する森岡友樹さんが間取り図の魅力について語っています。

 マンションの怪異現象を描いた「残穢(ざんえ)」(小野不由美著、2012年)あたりからでしょうか、フェイクドキュメンタリーという、実話のように虚構を語る手法がホラー小説の一ジャンルとして立ち上がりました。近年は「恐(こわ)い間取り」(松原タニシ著、18年)をはじめとする、不動産の事故物件などを題材にした怪談実話がはやっている。そんな先行ジャンルを変形させて生まれたのが本作です。

 結局みんな、家の話が好きな…

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