リニア中央新幹線関連の工事が行われている長野県大鹿村=2024年2月

 リニア中央新幹線の建設をめぐり、JR東海は4日夜、長野県大鹿村で進められている二つのトンネル工事の期間が、予定より3~4年程度遅れる見通しだと明らかにした。軟弱な地盤の掘削に時間を要していることなどを理由に挙げた。

 同社は3月末に、当初目標としていた2027年の開業を断念する方針を示している。

 今回、同社は村内で開いた住民説明会の中で、南アルプストンネル長野工区(8.4キロ)が30年夏ごろ、伊那山地トンネル青木川工区(3.6キロ)は29年夏ごろまで工事完了が遅れる見通しだと示した。静岡県境で「土被(どかぶ)り」(地表からの深さ)が最大1400メートルに達する「南アルプス」は、東京―名古屋間の最大の難所とされる。着工済みの工事について、27年よりも後の完成見通しが示されるのは初めて。

 長野県内の工事では、すでに飯田市に新設する高架橋(約1210メートル)について、工事完了が31年中にずれ込む見通しが示されていた。同社はさらに、報道陣の取材に対して、飯田市に建設予定の長野県駅(仮称)も「工期内に収めるのが非常に難しい」として、7月をめどに説明会を開く予定だとした。

 今回の説明会には住民約30人と行政関係者らが出席し、約2時間40分に及んだ。同社は、掘削工事で発生した残土のうち基準値を超えるホウ素とヒ素を含む「要対策土」を処理して、約1万立方メートルを村内の小渋川変電所の擁壁に使う計画も示した。

 参加した住民からは工期の延長に理解を示す意見が出る一方で、工事用車両の通行に「危険を感じている」という指摘や、「今後も遅れる可能性が本当にないのか」「静岡工区が始まっていないがどう影響するのか」といった疑問の声が出た。

 村内で宿泊業を営む男性(55)は取材に「工期が延びて迷惑をかけ、地域が疲弊することに対して、継続的な経済効果のある対策が何も示されなかった」と語った。(高木文子)

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