目利きがほれ込んだというその家の魅力は何か。写真家の石田美菜子さん(61)は2年かけて、海にせり出す神奈川県横須賀市佐島の白亜の御殿に通い、その姿に迫った。10月、写真集を出版し、作品展を開く。

 ブリキのおもちゃ博物館(横浜市中区)館長で、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士、北原照久さん(76)は30代のころ、若者情報誌「ポパイ」のあるコラムに釘付けになった。見出しは「海を庭にしてしまった家」。

 北原さんを一目ぼれさせたその家は、1935年に竣工(しゅんこう)した旧竹田宮の別邸だった。欧米で10~30年代にかけて流行したアール・デコと近代建築を融合させた昭和初期のモダンな設計だ。相模湾を一望し、海から船で乗り入れる停泊場を備えたボートハウスでもある。

 隣町には皇室の御用邸、周辺には別荘が立ち並ぶ風光明媚(めいび)な地区。戦後は英国人が住み、その後、何人かの手に渡った。北原さんは一目ぼれから20年近くを経た90年代後半に所有者となり、ゲストハウスとして使っているという。

 北原さんが音声型のSNS「クラブハウス」で「一目見たときから心を奪われてしまった」などと何度も話題にし、北原さんと直接対話も重ねるうちに石田さんは「希代の蒐集(しゅうしゅう)家を魅了した家を撮ってみたい」と思ったという。

祖父が残したアトリエ

 石田さんは日大芸術学部写真…

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