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東京都立多摩科学技術(タマカギ)の校内には、生徒の研究成果を説明する大きなポスターが所狭しと掲示されている。小学生の下校中の不審者遭遇予測システム、パプリカの種の抗菌効果、空調システムの最適な置き方など、その内容は多彩だ。「タマカギの研究者」4人に、それぞれの研究の動機を聞いた。
【連載】高校思い出クリック~青春群像記~
高校をシリーズで紹介する企画。今回は東京都立多摩科学技術高校の3回目です。
300キロの豪速球「空気圧ピッチングマシン」
力学などを研究する分野を専攻する浅川晴登さん(2年)は、空気圧で発射されるピッチングマシンを同級生2人と開発している。
物理学博士の父の影響で、幼い頃から、ボールペンを分解してペン先が飛び出す仕組みを調べるなど、物の仕組みに興味があった。
同じくらい好きだったのが野球だ。小学生から始めたが、中学生になって相手投手の変化球のレベルが上がると「ほとんど打てなくなった」。
昨夏、投球の軌道を流体力学の観点から研究しようと、ピッチングマシンの開発を始めた。半年たち、長い筒から発射されるボールは、プロ野球記録の倍速に近い時速約300キロを計測した。
3年生からは、筒の形状を変えるなどして圧力の加え方を変化させ、これまでのマシンにない軌道の変化球を発射したいという。「従来のマシンは摩擦で球に回転を加えるため、ボールの消耗が早い。空気圧で様々な軌道を生み出せれば、ボールが長持ちするマシンにできる」と力説する。
湧いてくるアイデアを、すぐ実験に移せる学校の環境に魅力を感じている。将来は「便利道具」を発明する人になりたいという。「自動で適切な長さに切れるセロハンテープや、細断中に詰まらないシュレッダーなど、作りたい道具がいろいろあります」
そして、もう一つ。「変化球を打てるようにもなりたい」
「ピーナツの殻を用いた空気清浄フィルター」でSDGs
佐藤秀哉さん(3年)が卒業研究で取り組んだのは、ピーナツの殻を用いた空気清浄フィルターの製作だ。
多摩科学技術には、実験科目…