中学の部活の地域移行が進む長崎県長与町。休日の活動では、学校ごとに色の違う短パンをはいた3校の生徒が、楽しそうにサッカーのミニゲームをしていた
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 晴れ間が広がった3月中旬の土曜日。長崎県長与町の中学校の校庭には、子どもたちの活気ある声が響いていた。

 「次、三つ!(三塁に投げろ)」

 「オッケー!」

 町に三つある公立中学の野球部員が、合同で内野手の連係を確認していた。いずれも部員が9人に満たず、単独では充実した練習や試合ができない。合わせれば11人になる。土・日の部活動の地域移行によって、そろって練習するようになった。指導には、社会人野球の強豪チーム出身者らがあたっている。

 4月に長与中3年になった中野洸志郎さんは、「平日はキャッチボールと簡単なノックしかできない。ここでは実績のある方から専門的なことも教えてもらえて楽しい」。

 町では休日に12種目21の活動が行われている。町にある総合型地域スポーツクラブ(SC)が運営母体となり、SCと契約する地域住民らが外部コーチとして教える。2023年度には外部指導者71人、教員と兼任が20人、大学生ボランティア33人が関わった。

 指導者には一回3千円が支払われる。生徒側の負担は月3千円。困窮世帯は月1千円だ。23年度はSCの収益約2720万円のうち、6割近くを占めた。残り4割は国や地方自治体からの公的資金でまかなう。

 長崎市の北東に隣接する長与町は、ベッドタウンとして発展してきた。ミカンやオリーブが特産の自然豊かな地で、面積は直径約10キロとコンパクト。JRの駅が四つあり、交通の便もいい。

 それでも人口は減っている。05年度に約4万2千人だったのが今年1月には約3万9千人に。平成のはじめに最も児童の多かった小学校では、1200人から半減した。

 部活動の地域移行を推進する金崎良一教育長は中学校長を歴任してきた。その頃から、部活動に関する相談を多く受けていたという。

 「『通っている学校に硬式テニス部がないから、よそに移りたい』と言われた。1人減れば、クラス数の減少にも関わってくる。部を作ってあげたくても、今度は指導者をどうするのかという問題もある」。団体スポーツは消滅と復活を繰り返し、学校ごとの部活動に限界を感じていた。「部活動が完全に成り立たなくなってから行動するのでは遅い。ゼロから再生するのには莫大(ばくだい)なエネルギーがいる」

 21年、国が地域移行のモデル事業を始めた当時、校長だった長与中の卓球部で先行して取り組むことにした。

 改革推進期間にあたる現在も、国からの助成金の交付があるが、いずれなくなることが予想される。当初から現在と同じ月3千円の受益者負担(会費)を求めた。それまでの部費の2倍だった。

 「3千円は高すぎる」

 「これまでの額で教員が指導…

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