10日に告示される名古屋市長選は、河村たかし氏の国政転身にともない行われ、約15年におよぶ河村市政の評価が大きな争点となる。「選挙は天才的にうまい」。河村氏についてそう評する、かつて政策ブレーンを務めた愛知大の後房雄教授(政治学)に同氏の政治・政策の手腕について聞いた。
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――河村氏が初当選した時にブレーン役だったそうですね。
オール与党の態勢だった名古屋市議会で、政党の応援がなくても勝負できるのが、衆院議員を5期務め、知名度もある河村氏でした。「市民税10%減税」などを掲げて当選しましたが、私はこの時の公約づくりに協力しました。
当時の市議会は、全国のなかでも高額な議員報酬や政務調査費の不適切な処理といった問題が取り沙汰されていました。河村氏が唱える「議員特権の撤廃」は、司法試験で挫折し、世襲議員でもないなかで落選を経て国会議員になった自身の体験に裏打ちされたもの。河村氏が選挙戦で持論を展開するには、ちょうどいいタイミングでした。初当選後、市議会のリコール、出直し市長選と立ち回って見せたのは、計算というより直感力によるものだと思います。付け焼き刃では、市民はあそこまで熱狂しなかったでしょう。
――河村氏は「庶民派」を掲げています。
庶民派も、作られたものではないと思います。本人は安い居酒屋で焼酎を飲めれば満足で、高いワインなどといったものに本当に興味がないんだと思います。ポピュリストと評されることもありますが、演技では民意がここまでついてきません。
――河村氏の政策手腕はどうみますか。
2期目以降、目立った功績はありません。それでも選挙に勝ててしまうのはなぜか。私は、1度爆発した民意の名残はなかなか消えないということだと考えています。河村氏に一度投票した人は、よほどのマイナスがない限り投票し続ける。直近2021年の市長選での河村氏の得票は自身最低でした。11年の出直し市長選で爆発した66万票の民意の名残が、21年の39万票というわけです。
――派手な施策を打ち出す一…