リニア中央新幹線のトンネル工事が地下で進む、岐阜県瑞浪市の大湫(おおくて)地区。旧中山道の宿場町の一つに数えられる同地区で3月ごろから、飲み水や洗濯に使っていた井戸などの水位低下が相次ぐようになった。トンネルの掘削が影響しているとみられ、さらに広がらないか地元では不安の声も上がる。大半がトンネル工区となっているリニアの工事は水問題と隣りあわせで進んでいる。
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田園風景が広がり、かつては宿場町だった同地区。記者が5月上旬、現地を訪れると、地区のため池は完全に抜け、底に深いひび割れができているのを見つけた。300年以上の歴史があると伝わる「天王様の井戸」も干上がっていた。
「水がこんなふうに枯れるのは見たことがない」と地元の80代男性。
豊富な水量で地域の生活を支えてきた井戸だが、現在も底が見え、枯渇してしまっている。
JR東海によると、同地区では、個人用の井戸と水源・ため池をあわせて計14カ所で水位の低下が確認されているという。
JR東海「リニア工事によるものと考えている」
現在、大湫地区の地下を貫く形でリニアの日吉トンネル(南垣外工区、全長7.4キロ)の工事が行われている。名古屋市からリニアの中間駅ができる岐阜県中津川市に向かう途中の位置にあたり、大湫の住民が暮らす地区の手前までトンネルが掘り進められているという。
「井戸の水がまったくなくなった」「底がひび割れている」。地区の住民らは「天王様の井戸」と同じように水位低下に見舞われていると、口々に被害を訴えている。
JR東海は13日夜、住民向けの説明会で、水源の代替地を確保するため、新たに2カ所で井戸を掘るほか、給水槽も新設するなどと説明。同社はリニア工事と水位低下の因果関係は確認できていないものの、「他に工事をやっていないので、(水位低下は)リニアの工事によるものと考えている」(広報部)として、住民らへの補償交渉も進めている。
ただ、田植えの時期を迎え、「今は水が張れているけど、この井戸を見ると心配になる。水田がだめになったら、集落としてやっていけない」と不安がる住民も少なくない。
水位低下について、岐阜県は「詳細と原因、対策を報告するようJR側に求めている」と説明した。瑞浪市もJRに対応するよう申し入れをする考えだ。(戸村登、寺西哲生)
「破砕帯」に当たると「湧水」が大量発生
リニア中央新幹線の品川―名古屋(285.6キロ)間の工事は、8割以上をトンネルが占めており、工事に伴う水位低下などは他県でも起きている。
山梨県笛吹市では2009年…