日本造園組合連合会岡山県支部青年部のメンバーらに指導を受けながら作庭作業をする県立興陽高校の生徒(右)=19日、岡山市北区

 造園の魅力に触れてもらい、若手人材の育成につなげたい――。岡山県内の造園業者でつくる団体が、高校生と一緒に伝統的な日本庭園を造り上げ、「日本三名園」の一つ、岡山後楽園(岡山市北区)前で公開している。人口減や職種の多様化を背景に造園の世界に飛び込む若者が減る中、伝統的なものづくりの良さを広くアピールする狙いもある。大型連休の観光客増を当て込み、5月6日まで展示する。

 高校生との「協同作庭」を企画したのは、県内70以上の業者が加盟する日本造園組合連合会県支部の青年部。3メートル×4メートルの庭園を二つ、岡山後楽園の正門前に造った。

 庭の一つは岡山の縮景を表す。蒜山三座に見立てた三つの岩を配置。庭の中央には古木がたたずみ、その前に石を配して瀬戸内海を表現した。石材や垣根は、いずれも県産の大窪石とアシを使っている。

 19日朝、県立興陽高校(同市南区)の造園デザイン科の3年生10人が作業着姿で集まった。青年部のメンバーらの指導を受けながら、石を置いたり垣根を整えたりして庭を仕上げていった。参加した井上晴葵さん(18)は「細かい部分や注意事項をプロの方に教えてもらい参考になった。造園の感性など学べることはしっかり学んで将来どうするかを決めていきたい」と話した。

 設計に携わった青年部の衣笠卓也さん(49)は「ぜひ興味をもって一緒にやってもらいたい。若い方が引き継いで、新しい風を起こしてくれたら」と期待を寄せる。

 今回の取り組みの背景には、若手の担い手不足や職人の高齢化といった造園業界を取り巻く環境がある。

 県支部によると、一般住宅の庭はニーズが多様化し、日本庭園を造る機会が減っているという。シンボルとなる木を1本据えるだけなど、庭の簡素化や合理化の流れが進んでいる。その結果、キャリアのある職人が石積みや竹垣といった技術を継承する実地の場が減りつつある。

 また、県教育委員会によると、造園を学べる県立高校は県内では同校だけ。県支部など業界2団体は昨年冬、同校と包括協定を結び、作庭技術などを学ぶ講習会に高校生が参加しやすくした。学校側とも情報交換を密にすることで、実際の仕事に触れてもらう機会を増やす考えだ。

 県支部では、青年部でも40~50代がメンバーの中心という。内山淳・県支部長(56)は、経営者の平均年齢も60歳を超えると明かす。「技術を持つ人が元気なうちに次世代に伝えておかないと。今のうちに若い人を育てておきたい」と危機感を口にしている。

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 青年部は「庭(2・8)の日」にあたる28日午前、庭園前で花の苗を配るなどのPR活動をする予定だ。(北村浩貴)

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