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山や畑を見渡す神奈川県厚木市の郊外。敷地に置かれた無人販売の冷蔵庫に続々と人が集まってくる。
お目当ては、具があふれんばかりの玉子サンドだ。こんなところでなぜ? いったい誰が? 知りたいことも次々とあふれてきた。
看板には手書きで「玉子サンド研究所」。その主は、山本幸子さん(81)。
正確に言えば、創業50周年を迎えた昨年10月14日の機に山本さんは相談役となり、後継として熊手俊之さん(43)が所長に就いたばかりだ。
半世紀前の1974年、山本さんは同県綾瀬市内で食品や雑貨を扱う個人営業の店を始めた。開業した10月14日は、当時サラリーマンだった夫・保夫さんとの結婚記念日だ。
9割の出荷がなくなった
商売は順調で、やがて取引先から声をかけられ、コンビニなどにもサンドイッチやハンバーガーを配達するようになった。工場を建て、最盛期には約300人の従業員を雇っていた。
ところが94年に、取引先の…