NMB48のレッツ・スタディー! 田中美空のジブリ夜話③

愛知県のジブリパークを訪れた田中美空さん=田中さんのX(旧ツイッター)から

 大阪・難波を拠点とするアイドルグループNMB48メンバーの田中美空さん(19)=京都府出身=は、スタジオジブリの歴代アニメーション作品の魅力にとりつかれたジブリ好きアイドルとして知られる。これからジブリ作品に触れたいと思っているビギナー向けに、好きな作品を順次、田中さんなりの視点で紹介してもらう。「NMB48のレッツ・スタディー!」番外編コラム「田中美空のジブリ夜話」その3をお届けする。

 前回と前々に続き、田中さんが一番好きだという作品「魔女の宅急便」について。

  • 【田中美空のジブリ夜話①】アイドルは幸せ届ける宅急便? ジブリ好き田中美空が語る「魔女宅」
  • 【田中美空のジブリ夜話②】さあ、ワクワクの詰まった箱を開けよう キキの言葉に重ねた私の思い

 記事後半で、田中美空さんのサイン色紙が抽選で当たる読者プレゼント企画の案内を掲載しています。

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八方ふさがりのキキに助けが! パン屋のオソノさんとの出会い

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田中美空さんと愛猫「もち」=田中さん提供

 たなか・みそら 2004年、京都府生まれ。愛称みそら。2023年1月から活動を始めたNMB48の「9期生」。趣味はスタジオジブリの映画作品を鑑賞すること、知育菓子づくりなど。夢は「絶対的センター」。

 前回と前々回は、「魔女の宅急便」の主人公である13歳の少女キキが、魔女の世界のしきたりに従って修行の旅に出るまで、そして旅先で出会った街を滞在先に定めるまでの印象的な場面について紹介しました。

 さて、前回のコラムで書いた通り、キキは素敵な街にたどり着きはしたものの、しばらくの間はうまくいかないことの連続で、あきらかに表情が暗くなっていきます。そんなにキキに転機が訪れるのです。

 落ち込みながら街を眺めるキキの隣で「奥さ~~ん! 忘れ物!!!」と叫ぶパン屋さん。でも、遠すぎてその声は相手に届いておらず、パン屋さんはすごく困った様子。

 キキは思い切って「私が届けましょうか?」と声をかけ、荷物を受け取って、ひょいっと塀から飛び降ります。

 パン屋さんは一瞬焦りますが、ホウキにまたがって見事に飛ぶキキの姿を見て「ワーオ!!!」と驚きます。

 これ、多分現代の若者なら「すっげー!!!」って言っていると思います。きっと、そういう意味でのワーオ!!!です。

タイトル「魔女の宅急便」につながっていく大事なシーン

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「魔女の宅急便」(1989年)の1シーン。スタジオジブリ公式サイトより (C)1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N

 このパン屋さんの反応をみた時、なぜかとっても誇らしい気分になるんですよね。

 キキすごいでしょ! 飛べるんやで!!! えっへん!!って(笑)。

 だれ目線の誇りか分からないですけど、なぜか昔からこのシーンを見るたびに、自分まで胸を張りたくなります。

 パン屋さんから預かったのは、赤ちゃんのおしゃぶり。ホウキに乗ってキキが着いたのとほぼ同時に、ベビーカーの中の赤ちゃんが大泣きし始めます。が、もうおしゃぶりが戻ってきたので安心です。

 これが、キキの初めての「宅配」仕事。作品タイトルの「魔女の宅急便」につながっていくわけなのです!

 お礼がしたい、とキキを部屋に通してくれたパン屋さんの名はオソノさん。

 なんと、使っていない空き部屋をキキに貸してくれることに……!

 良いこともなくて、今夜泊まる宿もなくてさっきまであんなに落ち込んでいたキキの顔が、ぱっと明るくなります。

 空き部屋の中は、「僕、明日には白猫になってるかも」と座布団1枚あげたくなるようなジジのぼやきが飛び出すほどにホコリだらけですが、窓を開けると海が見える、素敵なロケーションです。

「別の街をさがす?」問いに答えないキキ その真意は…?

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「魔女の宅急便」(1989年)の1シーン。スタジオジブリ公式サイトより (C)1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N

 キキが落ち込んだときも、ホコリだらけの空き部屋を見たときも、ジジは「別の街をさがす?」と尋ねますが、耳に入っているはずなのに、毎回キキは返事をしないんです。

 これはきっと、口に出して「ううん! この街にする!」と言えるほどの自信はないけれど、でもやっぱり最初に見つけた時に感じたときめきや運命をキキは大切にしたいんだろうなって。

 うまくいかないことだらけでも、この街に居たい気持ちは消えないんだなって、私はそう思っています。

 この描写、絶妙すぎます~。たまらん!!

 ちょっと分かりにくい例えかもしれませんが、2着の服で迷っている時、「どっちがいいと思う~?」と誰かに尋ねて、「こっちかな!」と返事をもらっても、自分の気持ち的にはもう片方の服の方が優勢なときってありませんか?(笑)

 キキの場合でいえば、この街に決めるか、別の街にするか。

 迷って揺れているのは事実だけど、自分の心の奥底では「こうしたい!」って意思は最初から決まっているんですよね。私だっていつもそうですもん!

 そんな時、自分が思い描いている方に相手も賛同してくれたら「やっぱりそうだよね?! じゃあこっちにするね!!!!」と背中を押されてすぐに決断できるけど、逆の答えだったら「う~ん……」と返事を濁し、結局は自分が最初にいいと思った方を選ぶ。人生で何回もこんな場面に直面したことがあります。

 心のどこかで「こっちの意見にいいね!って言ってくれ~……!」と願いながら、家族や友達に相談すること、私もよくありますもん。

自分一人で決断することの難しさ… 私にもわかる!

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「魔女の宅急便」主人公のキキに扮した田中美空さん=田中さん提供

 何歳になっても、何度試練を乗り越えても、自分一人で決断するのって本当に勇気がいるし 難しい。この場面のキキの気持ちは、痛いほど分かります。

 もしジジが「大変なこともたくさんあるだろうけど、この街で頑張っていきたいね!!」なんて言ってたら、キキはどう答えたんでしょうか? 少なくとも、無言……なんてことはなかったんじゃないかな?と「もしも」の妄想が止まりませんね(笑)。

 自分の魔法を生かして人を助けられて、魔法からつながった縁で素敵な人に出会えて、無事に泊まるところも見つかって……。

 ここからこの街でキキがどう過ごしていくのか、それは次回以降、書いていきたいと思います。

 一つひとつのセリフや描写から感じたことは、あくまで私が思う解釈なので、ほかの解釈の仕方もたくさんあると思います。

 感じ方に正解はないし 観(み)る人によって無限大の可能性があるのが ジブリ作品の素晴らしいところです!

 まだまだ長くなりそうですが、「魔女の宅急便」編、最後までお付き合いいただけるとうれしいです。またお会いしましょう!

 =続く

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