オリンピックへの道は、船酔いから始まった――。パリ五輪の近代5種で銀メダリストに輝いた、佐藤大宗(たいしゅう)選手(31)。日本代表で初の快挙を成し遂げたが、それまでは失敗や挫折の連続だった。「今があるのは、最悪だった時期のおかげ」と打ち明ける。山あり谷ありの歩みを聞いた。
夢をかなえた、夢に向かう、夢を与える……。そんな東北にゆかりある人たちの活躍を、ロングインタビューでお届けします。
水泳以外は初心者から、メダリストへの道
――海上自衛隊に入ってすぐ、「失敗した」と思ったそうですね。
「高校まで水泳選手だったので、泳ぎを生かせると思って入隊したんです。ところが、護衛艦に乗ったら船酔いがひどくて。治らなくて悩みました。ちょうど、教官から近代5種を勧められていたので、『選手になって人生を変える』と気持ちを固めたのです」
――自衛隊体育学校では、エリートでしたか?
「いやいや。近代5種は、馬術、水泳、フェンシング、レーザーラン(射撃とランニング)があるのですが、水泳以外は初心者。特にメンタルが弱くて、短気でした。たとえば、フェンシングで相手の攻撃が偶然に決まると、カッとなって切れたり、射撃で的を外すとイライラしたり」
――どうやって克服したのですか。
「2018年に右足のけがでリハビリをしていた時期に、コーチからメンタルトレーニングを教わったのです。怒りそうになったら、下を向いて黙って5秒待つ。その練習をくり返すと、気持ちを落ち着かせられるようになり、成績も安定してきました。途中で負けていても焦らず、『まだ全部は終わっていない。何とかなる』って思えるようになったのです」
東京五輪は役員参加「とは言っても……」
――ところが、21年の東京五輪の代表には選ばれませんでした。
「選考会で落ちたときは心が…