JR広島駅に路面電車を乗り入れるための工事が、急ピッチで進んでいる。現場を取材すると、高架化工事としては珍しい物が使われていた。電車の営業路線では、国内で初めて採用される工法という。一体、どんな工事なのか。
広島電鉄の路面電車の乗り入れは今夏の予定で、春に完成する新駅ビル2階に停留場が設けられる。工事は2021年6月に始まり、市街地方面に向かって南に伸びる新たな路線「駅前大橋線」も開設される。新路線のレール敷設は約1.1キロのうち、約260メートルを残すところまで来ており、全工程の8割が終わったという。
ただ、工事を担う広電広島駅JV工事事務所の平井修副所長(45)は「ここからの工程が重要。まだ気は緩められない」と険しい表情を見せる。
その一つが駅前の高架化工事だ。駅と猿猴(えんこう)川の間の約260メートルを高架橋でつなげる。だが、周辺には地下街があるため、橋脚を掘って埋めることが難しい。代わりに擁壁をつくって支えることにしたが、コンクリート製などにすると、重みで地下に影響が出かねない。
そこで採用したのが、発泡スチロールだ。重さはコンクリートや砂の50~100分の1だが、一定の強度がある。広島電鉄によると、こうした工法は道路ではよく用いられるが、国内の営業電車では前例がないという。
擁壁に発泡スチロールを敷き詰める作業は、昨年12月にスタートした。縦1メートル、横2メートル、高さ50センチの発泡スチロールのブロックなどを約2千個用意。全長約60メートル、高さ最大約5メートルの空間に詰めていき、今月下旬に終える予定だ。発泡スチロールは、駅のホーム工事でも採用するという。
一連の工事は、駅舎の大屋根やバスターミナルの整備などもあり、完成まで数年かかる見込みだ。平井副所長は「広島の玄関口を変える大きなプロジェクト。安全に工事を続けたい」と話している。