広島県福山市の花、バラの香りがする赤ワインの開発に、福山大生命工学部の久冨泰資教授(醸造微生物学)らが成功した。5月の世界バラ会議福山大会に向けた機運を盛り上げようと、22日から福山市内などで販売を始めた。
久冨教授は2013年から、市の依頼を受けてバラ酵母の研究をスタート。地域の特産品開発を手がける「ぬまくま夢工房」(同市御船町1丁目)が企画し、商品化の取り組みも進めてきた。
研究では、市園芸センターが育てた50品種のバラから約1300株の酵母を取り出し、ワインづくりに最も適した酵母を探した。
16年には、発酵力と安全性に優れ、濃い赤色の花をつける品種「ミスターリンカーン」の酵母を使った赤ワインの製造を始めた。まろやかな味わいが好評を得たが、バラの香りはしていなかった。
そこで久冨教授はミスターリンカーンの酵母研究をさらに進め、香り成分が従来の4倍になる変異株をみつけた。23年10月から、ぶどうの産地で知られる同県世羅町産のマスカット・ベーリーAを材料に仕込み、せらワイナリー(世羅町黒渕)で熟成させた。
完成したワイン「ローズマインド2023」は、口の中に広がるバラの「含み香」の強さが特徴。久冨教授によると、ミスターリンカーンの酵母によるバラの香りの赤ワインは、世界で初めてだという。
20日には、久冨教授とぬまくま夢工房の中島基晴社長、せらワイナリーの橋本悠汰・醸造主任が、福山市の枝広直幹市長に完成を報告した。枝広市長は「これまで『ローズマインドはバラの香りがするんですか?』と聞かれることが多かったが、これで胸を張って答えることができる」と喜んだ。
久冨教授は「飲んだ後、口の中にフローラルで幸せな感じが広がる。パーティーや観光みやげにも向いている」と話している。
1本1650円(500ミリリットル)で、約2400本製造した。天満屋福山店とJA福山市直売所「FUKUYAMAふくふく市」、せらワイナリー、ぬまくま夢工房で販売している。問い合わせはせらワイナリー(0847・25・4300)へ。