東京都内の各地でみられる工事現場だが、人手不足にあえぐ建設業界では賃上げに踏み切る会社も多いという=2024年5月8日午後1時6分、東京都中央区、中野浩至撮影
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 青森市内で水産加工会社を営み、約20人の従業員を抱える男性(40)は今春、3%の賃上げに踏み切った。「社会的責任として物価の上昇分くらいは賃上げせねば」との思いだった。

 だが、ちくわやかまぼこといった主力商品は市場が伸び悩んでいて、経営は厳しい。

 中小企業庁から届いたアンケートで、コストの上昇分をどのぐらい販売価格に転嫁できるかを尋ねる項目を目にし、「転嫁できるわけねえだろ」と怒りがこみ上げた。

 「政府は賃上げ分を価格転嫁すればいいと言うけれど、乱暴だ」。そう強く感じる。

 大手企業を中心に高水準の賃上げが相次ぐ一方で、中小企業に波及するかが焦点になっています。大企業に比べて余裕がなく、取引価格に人件費を転嫁するのも容易ではありません。連合は「5%以上」の賃上げを掲げますが、3分の2の会社が達成できていないとする統計を記事後半では紹介しています。

物価高と円安で赤字、賃上げが苦しい事情

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