「ストリートライブラリー」の活動の様子=2022年、フランス・パリ近郊のモントルイユ、ATDフォース ワールド提供

 子どもと本をつなぐ団体や活動に贈られる第27回国際児童図書評議会(IBBY、本部スイス)・朝日国際児童図書普及賞(IBBY、朝日新聞社主催)に、フランスの貧しい地区で屋外図書館の活動を続ける「ATDフォース ワールズ ストリート ライブラリーズ」が選ばれた。本と敷物を用意するという簡素な手法で、子どもが本と出会う機会をつくり、読書を通じて貧困の連鎖を止めるための糸口を探っている。

IBBY・朝日国際児童図書普及賞とは

子どもたちと本をつなぐ草の根の活動を支える団体や組織に贈られる。1986年に東京で開かれたIBBY世界大会を記念し創設された。88年から2004年までは毎年、06年から隔年で贈られてきた。これまでに、識字教育や図書館の建設活動などに取り組む33団体が受賞した。

 「名誉ある評価をいただき、とてもうれしく誇りに思う。屋外図書館の活動の根底にある、より公正な社会を実現するための様々な取り組みを知ってもらうことにもつながる」

 イタリア北東部のトリエステで8月30日にあった授賞式の後、この活動を展開するフランスのNGO「ATDフォース ワールド」のマリー・オービネさん(64)はほっとした表情で語った。

 「ATDフォース ワールド」は、貧困の解消を目指して様々な活動に取り組んでいる。「ATD」には「All Together in Dignity(尊厳のために、ともに行動を)」の意味がある。

貧困の克服めざし、子どもたちに本を

 屋外図書館は、1968年にパリ近郊のノワジー・ル・グランのスラム街で始めた。現在はフランス全土の66カ所で、毎週決まった時間帯に2時間ほど開いている。失業率や退学率が他地域よりも高く、貧困が著しいとして政府が「優先地域」に指定した地域が多い。

 地面に毛布などの敷物を敷いて、本を用意。地域の子どもたちに参加を呼びかけ、一緒に読む。活動を支えるのは計約500人のボランティア。利用する子どもの年齢は問わないが、2、3歳~12歳が中心という。

 オービネさんは「屋外図書館は『子どもたちに自分と同じような貧しい生活をさせたくない』という、親の信念から生まれた。極度の貧困や無知、侮蔑という暴力は人々を孤立させ、自分が人間社会の一員であることを疑わせるほど閉じ込めてしまう。だからこそ、私たちは本を持って彼らのところへ行くのです」と話す。

 オービネさんは16歳のころ…

共有
Exit mobile version