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喜三翼音さんの葬儀会場には、笑顔の遺影が飾られていた=2024年10月12日午前10時30分、石川県輪島市河井町、上田真由美撮影
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 能登北部を襲った9月の記録的な大雨で犠牲になった石川県輪島市久手川町の中学3年、喜三(きそ)翼音(はのん)さん(当時14)の葬儀が12日、同市河井町の正覚寺で行われた。同級生たちも参列し、突然の別れを惜しんだ。

 大雨の9月21日、翼音さんは自宅で1人だったとみられ、心配してビデオ通話をした父親の鷹也さん(42)も連絡がとれなくなった。自宅は基礎を残して流された。

 鷹也さんの友人や漁師、海女らも捜索に加わる中、福井県坂井市沖で9月30日に遺体で見つかった。

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 葬儀の最後、喪主の鷹也さんは、捜索への協力に感謝を述べ、「自宅から170キロも離れた福井県沖で地元の漁師さんが見つけてくれました。漁師さんの『娘さんは頑張りました、ほめてあげてください』という言葉に涙が止まりませんでした。私たちの元に頑張って帰ってきたかったんだと思いました」と声を震わせた。「泣いてばかりいたら翼音も心配するから、これからも力を合わせて頑張っていきます」と語った。

 葬儀後、祖父の誠志(さとし)さん(63)は、参列した中学の友人たちに「翼音もみんなに会えて喜んでいると思います」とお礼を述べた。取材に対して、「テレビなどで(報道を)見た全国の方にも、やっと翼音に会えて告別式もできたと伝えたかった」と説明。「翼音の死は絶対に無駄にしたくない。これからいろんな災害が起きたときに、何もいらないから命だけは助かるように、二度と私たちのような悲しいことにならないように気をつけていただきたい」と話した。(上田真由美)

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