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政治学者で早稲田大教授の遠藤晶久さん

 与野党第1党の党首が交代し、解散総選挙へ向けて走り出している。自民党総裁の石破茂首相、立憲民主党の野田佳彦代表ともに、党首選で競合した他候補に比べると「中道」寄りと目されているが、左右の対立という構図は過去のものなのか。有権者の政治意識や投票行動に詳しい政治学者・早稲田大教授の遠藤晶久(まさひさ)さんは、若年層が「護憲」を「保守」と理解するなど、政治意識や対立軸の変化を指摘する。

政治意識は富士山型+右側にこぶ

 ――9月に自民党と立憲民主党の党首が代わりましたが、ともに中道路線を模索しているように見えます

 今回の与野党のトップ交代には、自民党の裏金問題が大きく影響しています。疑惑が指摘された議員の数、金額、派閥ぐるみの組織的な問題だったことなどから有権者の怒りや不満がたまっています。特に、組織的な脱税ではないのか、という点に大きな怒りを感じているようです。

 自民党総裁選ではどちらかというと右寄りの高市早苗氏との競い合いで石破氏が選ばれ、立憲民主党代表選では左寄りの枝野幸男氏との競合で野田氏が選ばれました。両党とも左右に幅がある中での選択となりました。

 ――与野党の新トップが新しい政治を模索する中で、今の日本の有権者の政治意識をどう見ればいいでしょうか。「中道化」は起きているのでしょうか

 政治学者・東京大教授の谷口将紀さんらによる東大・朝日調査を見ても、もともと真ん中に分厚い層があるという点については、ほとんどの政治学者が異論はないでしょう。小選挙区で勝つために政治家や政党が「中道化」を模索するのは合理的な選択と言えます。次の衆院選や来年の参院選で誰に応援に来てほしいか。誰がトップなら集票につながるか。高市氏ではなく石破氏がいい、というのが自民党議員などによる選択でした。

 ただ、日本の有権者の政治意識を、左右の意識を横軸にとってグラフに描けば、富士山のように真ん中に山頂がくると同時に、右側に小さなこぶがあることも見て取れます。自分を保守(右)だと思う有権者がそれなりにいるということです。

 右側に一定いる支持層は、第2次安倍晋三政権以降の自民党におけるいわゆる「岩盤支持層」の一翼を担いました。有権者の右傾化はともかく、自民党議員の間では右傾化が観察されています。

 衆院選を前に、いま私たちが考えるべきことは何か。有権者として何を問われているのか。インタビューや対談を通して考えます。

 ただ、自民党は与党でいるこ…

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